フランス大統領選挙2017!マクロン氏とルペン氏の紹介と国民性から見る選挙予想
フランスの大統領選挙も大詰め。
4人の候補者により大統領選の投票が行われましたが、誰も過半数を取らなかったので上位2人による決選投票が行われます。
アメリカの選挙、トランプ氏とヒラリー氏に関しては事前から情報がいっぱいありましたが、フランスの大統領選に関してはあまり情報がありませんね。
なので、今回は2人の候補の紹介をしながら、選挙戦の予想をしてみたいと思います。
フランスの大統領制
フランスの大統領選は国民の直接投票によって決定されます。
任期は5年。現在2期まで勤めることが可能です。
全国民の直接投票ということでアメリカのように得票数はヒラリー氏が多いけど、大統領になるのはトランプ氏。というような複雑な形にはなりません。
どっちがいいかという論議は置いておきますが、直接選挙では国民の選択がわかりやすく結果として出ます。より国民の意見が反映される選挙になります。
そのため、フランスの大統領選は先進国の中でも高い投票率を誇っています。
今回の大統領選の争点 親EUか反EUか
毎回フランスの大統領選は、とてもわかりやすい対立軸に分かれます。
- 資本主義経済の戦いを進めていき、強いフランスを作るのか。
- 税収を上げて国民の福祉や介護に力を入れる優しいフランスを作るのか。
なんていう選挙もありましたね。(サルコジ氏とロワイヤル氏)
直接選挙なので、国民に分かりやすく方針を伝え支持してもらう必要があります。そのため、それぞれの主張したいことが単純化され、わかりやすい対立軸になるんだと思います。
今回の選挙の争点で最も重要な争点は今後のフランスが親EUか反EUかという点です。
マクロン氏は経済畑出身。銀行の副頭取などを務めた経験からグローバリゼーションやEUの提携が重要だという立場に立っています。
ルペン氏は経歴こそ弁護士ですが、父親の影響から生まれながらの政治家と言っていいでしょう。グローバリゼーションが進みすぎ、自国が危険に晒されているという主張でEUからの離脱、自国第一主義に戻ろうという立場に立っています。
マクロン氏はエリート層やリベラルな層からの支持を受けており、ルペン氏は外国人労働者に仕事を奪われている貧困層や愛国者からの支持を受けています。
まさにトランプ氏とヒラリー氏の選挙を思い出します。性別が逆なのがアメリカとフランスらしいとは思いますが。
マクロン氏とルペン氏の紹介
エマニュエル・マクロン
1977年12月21日生まれ。現在39歳と若い候補者です。
学者と医者の家庭に生まれ、パリ第10大学を出たのちにグランゼコールであるパリ政治学院や国立行政学院を卒業しています。
その後、官僚から政治家へ転身しつつロスチャイルド系の投資銀行で副頭取まで出世しています。
純然たるエリートを体現している経歴ですね。
日本ではあまり馴染みのないグランゼコールですが、フランスにおいてエリート=グランゼコール出身者。大企業の社長や官僚、政治家は必ずグランゼコール出身です。フランスは日本以上の学歴社会と言っても過言ではありません。
そんなマクロン氏の主張は分断されつつあるフランスを合流させつつ、EU共同体の中でフランスのプレゼンスを上げていこうという姿勢です。
EU全体として移民は受け入れる範囲で受け入れつつ、直すところは直していこう。そんな穏健な方針を打ち出しています。
マリーヌ・ル・ペン
1968年8月5日生まれ。現在48歳。こちらも日本の政治家と比較するとお若いですね。
過激な極右の政治家として知られるジャン=マリー・ル・ペンの3女として誕生。パリ第2大学を出身後弁護士として働き始めるが、2004年から政治家へと転身。フランスだけでなく欧州議会の議員などを歴任し、今回の大統領選に出馬しました。
お父様であるジャン=マリー・ル・ペン氏といえば、歯に衣着せぬ発言で熱狂的なファンを作る一方、激しく憎まれた政治家でもありました。EUが設立する前から自国第一主義を唱え続け、何度か大統領選挙にも出馬しましたが、本人は決選投票まで進むことができず、引退直後に娘が大統領選の決選投票まで進んだのはとても複雑な感じだと思います。
そのマリーヌ・ル・ペン氏の政治的立ち位置は極右と呼ばれています。
EUからの離脱を公約として掲げています。国境を取り戻すと度々発言しているので、移民に対しても厳しい姿勢を取ることになるでしょう。
イスラム教徒に対し厳しい発言を多くしますが、実はイスラム教徒からの支持は決して低くありません。彼女が主張しているのは『郷に入っては郷に従え』ということなので、郷に従っているイスラム教徒としては、過激派がフランスに入ることでイスラム教徒全体への不信が広がるくらいならル・ペン氏を支持したいという流れがあるようです。
選挙の予想
- ここからは完全に一個人の考察です。あらかじめお含みおきください。
フランスのパリに5年住んでいました。だから私の考察はパリっ子がベースです。フランスではパリっ子とそれ以外は国籍が違うというくらい考え方や性格が違うので、参考になるかわかりませんが、ちょっと考察してみます。
基本的にフランス人はへそ曲がりのかっこつけです。
一般的に〜とか普通は〜とか大っ嫌いです。
ポピュリズムが世界的に広がっている時にあえてその反対に行くのが格好いいと感じる人たちです。地獄のミサワっぽい人たちです。まぁ冗談はともかく、世界的なポピュリズムに対し危機感を持ち、マクロン氏への支持を増やしています。大統領選に出て、ダメだった2人の支持者はほとんどマクロン氏に流れます。
これだけを考えるとマクロン氏が優勢のようにも思えます。しかしその一方でマクロン氏とル・ペン氏の支持層を考えるとそう簡単でもありません。
最初に書いたようにフランスは投票率の高い国です。そして、自給率の高いフランスの国民の多くが畜産農家などに従事しています。
マクロン氏は生粋のエリートで支持層はホワイトカラーが中心。後は極右を恐るリベラルな人たちでしょう。
ル・ペン氏の支持層は数多くの貧困層から一般市民です。ドイツでは移民の受け入れが進みすぎて、小さな農村が移民に占領されるような状況が起こっています。それを見て恐る田舎の人たちは結構多いのではないでしょうか。
またフランスは愛国主義者が多い国です。だからこそジャン=マリー・ル・ペンが一定層の支持者を持ち続けていたのでしょう。
今の世界的な流れとして自分で血を流しながら、人を助けるような行き過ぎたグローバリズムにストップをかけようとしていますね。もっと自国を大事にしよう。自分たち国民を大事にしようという政治家が躍進しています。
元々『国』というのは『国民』を保護するための枠組みです。しかし、国際的事情から移民の受け入れだったり労働者の受け入れだったりが進みました。
その反発を大きく象徴しているのがBrexitです。
様々な要因はあるでしょうが、一つの要因は外国人がイギリスに押し寄せてイギリス国民が納めた税金から医療補助や保護を得ることができるという不平等性です。
『なんで俺たちが納めた税金を税金を納めない外国人に使わなきゃいけないんだ』
合理性だけを推し進めたグローバリゼーションの世界ではどこかにシワ寄せが行きます。それが破裂した。というように私は考えています。
長くなってしまいましたが、私の予想としてはマクロン氏が優勢。だけど、限りなくル・ペン氏が追い上げ、非常に接戦になると思います。
余談ですが、日本との交流から考えるとル・ペン氏は親子共々日本好き。 EU離脱後、なんらかの協力体制を築くことができれば面白いなと思います。
ということで、あんまり公言はできませんが、私は隠れル・ペン派です。
結果が楽しみですね。