【祝・全員救出!】タイの洞窟13人遭難の経緯と世界からの援助

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未確認情報ですが、一部報道機関により7月10日全員の救出が報道されました!

7月8日の夜の段階で4名の救出が確認されました!

2018年7月8日タイの洞窟で遭難した13人の救出を行う作戦が開始されました。今回の遭難事件は世界中のメディアに取り上げられ大注目の事件です。

今回の経緯や世界中から寄せられた援助を紹介したいと思います。

タイの洞窟13人遭難事件の概要

事件発生場所

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事件が発生したのはタイのチェンライ県メーサイにあるタムルアン洞窟です。チェンライはミャンマーとラオスの国境に位置している県です。さらにその県の中でミャンマー側の国境に面していてラオスのすぐ近くに位置するメーサイにこのタムルアン洞窟があります。

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このタイ、ミャンマー、ラオスの国境はかつてゴールデントライアングルと呼ばれ、アヘンやモルヒネ、ヘロインの原材料になるケシの生産をしていたことで有名な地域です。

 

 

事件のこれまでの経緯

6月23日タイの少年サッカーチーム『ムーパ・アカデミー』の11歳から16歳の少年12人と男性コーチ1名の計13名が行方不明になりました。

コーチはおばに『チームメイトの誕生日を祝うために洞窟に入った』と伝えており、戻らないことで行方不明になったことがわかりました。

その後、警察が洞窟を見に行きましたが、雨季の大雨によって洞窟内で水が氾濫。特別なレスキューチームですら洞窟の入り口付近の穴が水に浸かって洞窟には入れなくなる状況でした。

24時間体制でレスキューを試みたものの、捜索は難航。発見できないまま9日間が経過し、生存は絶望的かと思われていたところ捜索10日目にして、13人全員無事の状態で発見することができました。

この喜ばしいニュースはあっという間に世界中へ広がりましたが、詳しい状況が広がると失望も広がりました。

洞窟に浸水が進んでいて、13人を外へ連れ出すのが難しいという状況がわかったのです。

特に図のPattaya Beachと呼ばれる場所では、ダイバーが酸素ボンベを背負ったままでは通れないくらい洞窟は狭まっているのです。

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ダイバーはボンベを背中からおろし、ボンベを押しながら這って抜けるしかありません。

泥水のため、全く先が見えない中、この狭い中を抜けるのはダイビングをしたことがない少年たちには不可能に近いです。
また上から掘るという案もありましたが、図をご覧の通り、洞窟の上には1キロほどの山があり、そこから地下へ掘り進むのは現実的ではありません。
ポンプを使い、水を排水していますが、雨季のチェンライ。排水するそばからそれ以上の水が洞窟の入り口から、地表から洞窟へと流れ込みます。
問題は山積みですが、中に残された少年たちの体力を考えると残された時間の猶予はありません。そして、今日7月8日、総力を挙げての救出作戦が開始されました。

タイ時間の午前10時に開始され、夜の21時に全員の救出が終わる予定です。

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 <7月8日は4人か6人の救出が確認されました。残る人たちは7月9日に再度救助活動を行う予定です> 

登場人物

コーチ:Ekapol Chanthawong 24歳
チームのコーチであり、最年長の遭難者です。
彼はコーチの一人でサッカークラブの全体をみる監督の元、より小さい子たちのチームを担当していました。
一部では監督者責任を問われ、非難されている彼ですが、これまでの彼のfacebookでの投稿や12人の少年たちを落ち着かせ、全員を無事にサバイブさせてきたその指導力から大多数の人から支持されています。
Facebookではこれまで小さな子供達をどうやって成長させるかを常に考えている姿勢が伺えます。
彼は出家したことがある元僧侶であり、還俗した今でも時間があればお寺で瞑想をしている信心深い青年です。
10日間もレスキューが来ず、パニックに陥ってもおかしくない状況で12人の少年たちが落ち着いて救助を待てたのは彼が瞑想を教えたからではないかと取り沙汰されています。
彼の性格はレスキュー隊が受け取った手書きの手紙からも伺うことができます。
『まずお子さんたちのご両親へ。子供達はみんな元気です。レスキューの人たちは子供達のケアをとてもよく見てくれています。私は全力を尽くして子供達に可能な限り手助けをすることを約束します。今ある全てのサポートに感謝するとともにあなたたちご両親たちに深いお詫びを申し上げます』

 

Adul Sam-On

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レスキュー隊たちが撮った子供達の映像で、しっかりと受け答えしていた少年が脚光を浴びています。
彼の名前はアドゥル。国境を越えたミャンマー生まれの少年はタイのキリスト教徒の家庭に引き取られ育てられました。
外国人のレスキュー隊に英語で『僕はアドゥルです。元気です』と答えました。取り残された13人の中で唯一英語を喋ることができる少年は、とても複雑な過去を持っています。
ミャンマー語、タイ語、中国語と英語が喋れる彼はミャンマーのワ自治州というところで生まれました。ワ自治州はミャンマー政府と内戦状態であり、国際的にも認められていない州のため、彼はパスポートを持っていません。しかし、両親は彼により良い教育を与えるために密出国をさせ、タイのキリスト教の教会へと送りました。この背景から彼は出生届も出されず、戸籍もない少年なのです。彼を教える先生たちは口を揃えて『とても礼儀を守るマナー正しい少年で勉強をしっかりする真面目な少年である』と大絶賛しています。
彼が通う学校の校長はこう話しています。
『彼は我が校の宝石です。彼は勉強熱心でスポーツ万能という二つの面を持っています。彼の活躍でスポールのメダルや勉強の賞状を我が校にもたらしてくれました』

 

リチャード・スタントンとジョン・ヴォランタン

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困難な洞窟ダイブにトライし、成功。そして13人の遭難者を発見したのはイギリス人であるリチャード・スタントンとジョン・ヴォランタンの二人です。写真の左のスタントンさん57歳は引退した消防士、写真右のヴォランタンさん47歳はITコンサルタントです。
スタントンさんは数々の洞窟レスキューの実績から2012年大英帝国勲章を受賞しました。また消防士としても大活躍。2011年が最優秀消防士を受賞しています。ヴォランタンさんも有事にはレスキュー隊の一員として呼ばれる優秀なダイバーです。

 実はこの二人が一緒にダイブするのは今回が初ではありません。

2010年にプロダイバーでありフランスを代表する洞窟ダイバーであるエリック・エスタブリさんのレスキューの際に一緒にダイブしました。2人はこの実績から2012年、UK’s Royal Humane Societyから銅メダルを受賞しています。

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世界から寄せられる援助

タイの救助隊員1000人、米軍から30人以上、オーストラリアや中国や日本からも専門家が捜索に加わっています。そのほか、様々な支援の手が広がっています。

テスラやスペースXなどの社長として有名なイーロン・マスクは自身の採掘会社The Boring Companyのエンジニアを派遣し、採掘の救出プランを立案しました。

 レスキュー隊が子供達を見つけた時、少年たちはW杯がどうなったのかをすぐに聞きました。それを受けてFIFA会長は子供達をワールカップの決勝に招待することを決定し、招待状を送りました。

サッカーの日本代表はサイン入りユニフォームを贈呈します。

 今回の援助で心温まるエピソードも。
オランダ人とのハーフのタイ人の子供が、オランダ首相にむけて、13人の救出のために力を貸してほしいと書いた手紙に首相自ら回答。その結果、Van Heckというオランダのポンプ会社がタムルアンに派遣されることになりました。子供の手紙が国を動かすことができたのです。

 

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それ以外にも様々な援助がされています。残された子たちが一刻も早く、救出されることを祈ってなりません。