元ホテルの中の人が教えるホテルの予約サイトの賢い使い方 in 東南アジア

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タイのプーケットに移住する前、ミャンマーでホテルの経営に携わっていました。さらに遡ると学生時代、ビジネスホテルでフロントのアルバイトをしていました。

業界側にいて知ったことなどをお伝えしたいと思います。
タイトルで東南アジアに限定した理由はあとで書きます。

結局予約サイトは使うべきかどうか。

結論からいうと、リスクを踏まえた上で使うといいと思います。
じゃあ、どんなリスクがあって、どういう風に回避して予約サイトを利用すればいいのでしょうか。

予約サイトについて。

東南アジアに限定していえば、agodaとBooking.comが2強です。
予約の流入数がこの2サイトでほぼ9割を越えます。

他のサイトもありますが、スケールが天と地ほど違うので、ホテル側もこの2サイトを中心に広告を出稿しますし、優先的にこの2サイトに空室情報を出します。

中国やヨーロッパ、アメリカだと違うサイトが強いエリアもあります。なので今回は東南アジアに限定して取り上げます。とはいえ、基本的な考え方はこれらのエリアでも活用できますので、参考にしてみてください。

agoda

Booking.com

 

しかし、この2つを同じ予約サイトとして紹介していますが、それぞれの機能は別物。
違うカテゴリーのウェブサービスです。
その違いはあまり知られていませんが、非常に重要な違いです。
せっかくこのページまでお越しいただき、読んでいただいているのでそれだけはしっかり理解していただければ幸いです。

 

agodaとBooking.comの違いについて

agodaはオンラインの予約&決済サービスで、Booking.comはオンラインの予約サービスです。今はBooking.comでも決済できるようになったので混合しがちですが、この違いは非常に大きいです。

ホテルの立場で考えてみましょう。あとで答え合わせしますよ。

ケース1

ある日の予約にオーバーブッキングが発生!さてどうしようか。
(オーバーブッキングが発生する舞台裏は後ほど紹介します)

すでに支払いが済んでいるagodaのお客さんと予約だけで支払いされていないノーショー(当日キャンセル)の可能性があるBooking.comのお客さん

どっちを優先しますか?

ケース2

急な日程変更で予約がキャンセル!
キャンセル料を徴収できるのは支払い済みのagodaのお客さん?それとも予約の名前だけ入っているBooking.comのお客さん

 

答え合わせは、また後ほど。

 

予約サイトのメリット、強み。

予約サイトのメリットはなんでしょうか。
それは間違いなく料金です。
各予約サイトは掲載にあたって『最低価格保証』という条件を契約書に盛り込んでいます。彼らの料金チェックは並みじゃありません。

他の予約サイトに1円でも安い掲載があったら、すぐに連絡が来ます。

『この時期、繁忙期だから料金あげよう』と思って、Aのサイトの料金を変更。さて、Bのサイトの料金も変更しようかな……ピコーン you got a mail!
『他のサイトでもっと安い料金を出しているようですが、いかがいたしましたか?』

 

ザ・監視社会!

 

マジでこんなことがありました。担当者暇すぎでしょ。
それだけのパワーをここに注いでいるわけです。

さて、ここに一般にはあまり知られていない大きな大きな問題点が隠れています。

定価100ドルのホテル。自社サイトでも100ドル。予約サイトでも100ドル。
予約サイトで売れると手数料が引かれて88ドルしか手に入りません。
できれば自社サイトから予約してほしい。けど、契約書を交わしているから自社サイトで安い料金が出せない……。どうしよう……。

予約サイトの強さを利用した殿様商売ですね。主導権は完全に予約サイト側にあります。だからこそ、高級ホテルなんかはagodaやBooking.comに敢えて掲載しないんですよね。でも、一般のホテルじゃそんなパワーゲームできません。

なので、特殊なケースを除き予約サイトからが最安値になります。

もし、知人友人がホテルを経営している場合は直接予約してあげてください。

 

※ところで、日本のホテル自社サイトにおける最安値保証って全くもって保証していないですよね。完全にアウトだと思います。なんであんなのが蔓延っているのか。民泊がどうのこうの言うの前に業界を是正すべきだと思います。

 

予約サイトのデメリット、弱み。

これはもう一つに限ります。トラブル対応に弱い。
現場で問題が発生した時に対応ができない・遅い。

飛行機に乗って、現地に到着。空港から街の中心にあるホテルまでバスと電車で移動。ホテルに到着したのが、夜の10時。
チェックインしようと思ったら、予約が入っていない。ホテルのwifiを借りて予約サイトに連絡する。
でも移動でヘトヘトに疲れている妻が隣で怒っている。しょうがないから、現地で予約サイトより高いウォークインレート(定価)でチェックイン。夜中に予約サイトから返信。
『予約はちゃんと入っています。ホテル側の問題では?』
休んでいる妻を寝かしたまま、ホテルのフロントに抗議しに行く。
『担当責任者がナイトシフトじゃないからわからない、彼が来たら聞いてくれ』
そんなこと言われても翌日は違うところに移動する。
『とにかく、状況をはっきりさせてくれ。メールアドレス置いて行くから必ずマネージャーから連絡するように伝えてくれ』と言い残し、旅行を続行。
特に連絡がないまま、旅行が終わって日本に帰るとクレジットカードの請求書が。二重取りになったまま。
どうなってるんだと予約サイトとホテルに連絡するものの梨の礫で結局泣き寝入り。このトラブルで旅行全体が後味悪い思い出に。

なんていうことがあり得ます。

今時、パソコンでデータ処理しているからオーバーブッキングなんてないんじゃないの?と思われるかもしれません。

実際それを管理しているのは、人間です。簡単にミスが発生します。

特に小規模なホテルであればあるほど、発生しやすいです。
『小規模なホテルなら、部屋数も少ないし管理しやすいんじゃないの?』
実はこんなところにも落とし穴が潜んでいます。

今は様々な予約サイトが林立しています。2サイトで9割を占めているとはいえ残りの1割も重要です。特に弱小予約サイトになればなるほど、手数料が安くなるのでホテル側としては弱小予約サイトに頑張ってほしいです。手当たり次第登録します。

ある日のこと

ピコーン。予約が入りました。

お、一部屋埋まったな。
じゃあ、他のサイトでも空室1部屋減らさないと。

ピコーン。予約が入りました。

この日は順調だな!よしよし。

ピコーン。予約が入りました。

 …ちょっと待てよ。部屋数大丈夫か?

ピコーン。予約が入りました。

まずい。あの予約サイトで空室減らすの忘れてた。

ピコーン。予約が入りました。

完全にオーバーブックだ…。どうしよう…。
当日キャンセルの可能性も微レ存…。
来た順に入れていって最後の人は断るしかない…。

という流れで上記のようなオーバーブック問題が発生します。
なぜ小規模ホテルで問題が発生しやすいかというと、チャンネルマネージャーを入れるほど利益が上がっていない可能性が高いんです

チャンネルマネージャーというのは簡単にいうと、ホテル予約サイトを横断的に一元管理してくれるサービスのこと。
例えば、agodaで一部屋売れたらBooking.comから一部屋減らす。といった管理です。
元々は予約管理する人の職業のことだったんですが、そういうオンラインサービスが生まれたのでサービスそのものを指す言葉になりました。
サービスそのものは安価なので、導入しているところがほとんどだとは思いますが、昔ながらの家族経営のホテルだとか、経費をギリギリまで削減したいホテルだとかはいまだにチャンネルマネージャーを導入せず、人力で管理しています。

怖いですねー。

 

ケーススタディーの答え合わせ!

ケース1

オーバーブックされた時、agodaとBooking.comのどっちを優先するの?
原則agodaです。ただ現場のスタッフによります。ゆる〜い国だと先着順の場合もあります。

現場でのネゴ次第だと思いますが、現実に空き部屋がもうない場合、どうしようもありません。代替えホテルを探してもらって、ホテル代を請求しましょう。やったれやったれ!

昔に比べて、オンライン予約が多くなったおかげでオーバーブックの確率は歴然として減りました。なので、発生する可能性は低いと思います。

昔は、旅行といえばグループツアー。とにかく部屋数抑えて当日キャンセルとか当日部屋数が増えたりなんというのが日常茶飯事でした。それに比べると、今のように予約サイト経由の予約が増え、小さなホテルも自身で集客できるようになったのは素晴らしいことですね。ホテル側も旅行会社に頼りきりになる必要がなくなったんで、シュアじゃない予約は受けないようになって来ました。

ということで、オーバーブックの危険性は低いと思います。

ケース2

キャンセル料の回収はagodaじゃないと出来ません。
ということは、agodaの場合キャンセル料をしっかり取られます。
Booking.comは予約を入れてくれるだけ。支払いの保証はしてくれません。
だからこそ、現地で支払いという形が取れるんです。

ホテル側としては、どっちがいいと思いますか?

普通に考えると、agodaで事前にしっかりお金もらって、キャンセル料も担保できる方がいいですよね。ただし、agoda経由の入金って、税務署が完全に抑えています。
もしbooking.comでお客さんが現地で支払った場合、そこのお金の動きというのはデータに残りません。
『予約あったけど、お客さん来なかったよ』とbooking.comに伝えて、お金をどこかに入れると税務署には…ゲフンゲフン。

東南アジアって怖いですね。(ニヤリ)

言っておきますけど、みんながみんなそんなことやっているわけじゃありませんよ。

 

予約サイトの賢い使い分け方のまとめ

さて、様々論じて来ましたが、そろそろ結論を。
どうやって予約サイトを使い分けていきましょうか。

予約の確定具合

まず、予約の段階でキャンセルの可能性がどれだけあるかを考えましょう。
少しでもキャンセルや日程変更の可能性があるならBooking.comから。
日程も決定、変更もなさそうならagodaから。

支払いの方法から

なんとなくウェブ上でクレジットカードを使いたくないなぁ。
俺はいつでも現金主義なのさ。という方はBooking.comから。
現金は持ち歩きたくない。泥棒にあったらどうするんだ。クレジットカードなら無くしてもすぐに止められるし、クレジットカードの方が安全だ。という方は、agodaから。

料金の違いから

agodaは予約確定の直前まで行かないと税金が加算されません。
一方Booking.comは最初から税金が加算された数字が出て来ます。
一見agodaの方が安く見えますが、最後まで油断しないで値段を比べましょう。

※支払い通貨を選ぶことが出来る時は、必ず現地通貨にしてください。
後日、記事を書きますが、外貨にすると余計なものが乗って来ます。ご注意を!

 

 

ということで、予約サイトをご自身の希望に合わせて使い分けましょう。
みなさんのご旅行にお役に立てれば幸いです。

agoda

Booking.com