これからを生きるために必ず読まなくてはいけない絶対的バイブル

〈インターネット〉の次に来るもの―未来を決める12の法則

 

今我々はかつてない変革の時期に立っている。

誰が予想しただろうか。ポケットに入る小さな箱(ペンケースよりも小さな!)で世界に繋がることを。

はじめに

海外の友人と連絡を取り合う際に数週間から数ヶ月かけて手紙を送らなければならなかった時代、芸能人や著名な学者と言葉を交わすことが不可能だった時代。

私がまだ小学生だった20年前の話である。

20年後、facebookを見ればリアルタイムで友人の近況がわかるし、twitterであらゆる有名人にコンタクトを取ることができる(リプライがあるかどうかは別として)。

今、人を取り巻くあらゆる面で加速的に技術革新・インターネット革新が行われている。そしてそれを好む好まざるに関わらず、その革新と無関係でいることはもはや不可能である。積極的な適応か消極的な適応かを選ぶことしかできない。

無関心で関わらないという選択肢もあるように思うかもしれない。

しかし、現実社会に出て見ればそれがいかに困難なことかわかるだろう。携帯電話やインターネットに頼らず、生きている人間がどれだけいるのか。どんな頑固爺さんだって、孫に心配だからと言われて否応なしに携帯電話を持たされる時代だ。老人会のグループラインだってあることだろう。

また子供の生活を想像しても、革新から隔離して育てることは不可能である。あらゆる場面で、利便性に富んだサービスが提供されている。

そんな革新の中に生きている今の時代の我々は、そういう変化にさらされているのか。どういう未来が待ち構えているのかを改めて学習し理解をするべきである。

その嵐の中の荒波の間に見える灯台が今回紹介する本『<インターネット>の次に来るもの 未来を決める12の法則』である。

私はもともとインターネットの進歩に対して恐怖を持っていた。

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それは未知に対する恐怖だった。インターネットがどんな進化をするかがわからなかった。

筆者のケヴィン・ケリーは雑誌『Wired』の創刊編集長であり、サイバーカルチャーの第一線に立ち続けた人物であり、過去から現在、未来のテクノロジーについて世界で最も詳しい人物の一人である。

これまでのテクノロジー(インターネット)について、そして現在の研究の方向性、そして来るべき未来の姿を論理的に明快に説明しているのが本書である。

これを読んで、インターネットの進化についての恐怖感はある程度払拭された。(新たな悩みも生まれたが)

これからを生きる老若男女、ぜひ読んでいただきたい必読の一冊である。

 

総括

第1章 Becoming

Becoming (なっていく)

あなたの手元のデバイス(パソコンやスマホ)はあらゆるアップデートを要求し続ける。OSをアップデートすると、ソフトウェアのアップデートが必要になるという形でアップデートは波及し続けて行く。

それは端末毎に独立しているわけではない。

iPhoneのアップデートがmacのアップデートを要求する場合もある。連鎖的にアップデートの量は多くなっていき、それはもう止まることはない。

この絶え間ない拡張の行方はユートピアでもディストピアでもない。

ユートピアは、なんの心配もなく過ごせる理想郷。
ディストピアは無法・ならず者の世界が広がる無政府状態。
ただ現実的にディストピアは無法のままでは終わらない。ならず者の世界になったとしても、ならず者たちの利権争いが無政府状態から脱出していく。

いずれにせよ、ユートピアもディストピアも我々の向かう先ではなく、我々が現在立っていて、さらに向かう先はプロトピアである。

プロトピアとは常に変化をしていて何かに「なっていく」状態のことを言う。

そして、現在の変化はこれから先さらに加速していくだろう。30年前にドメイン名を取得することの意味を大手企業が見出せなかったように、今何かを始めれば30年後にメインストリームになる発明ができるかもしれない。

歴史上、何かを発明するのにこんなに良い時はない。(中略)いまこそが、未来の人々が振り返って、「あの頃に生きて戻れれば!」と言う時なのだ。

第2章 Cognifying

Cognifying(認知化していく)

グーグルが2015年買収したディープマインド(Deep Mind)という会社はネイチャー誌にいかにAIにピンボールのようなゲームを学習させたかの論文を発表した。

遊び方を教えるのではなく、遊び方をどうやって学ぶのかを教えた。

先ずはあてずっぽうの遊んでいたが、30分経つと4回に1回しかミスをしなくなる。1時間経って300回ゲームをこなすとミスをしなくなる。2時間経つと人間が見つけることのできなかった抜け道を発見した。

これから来るAIは『2001年宇宙の旅』に登場するHAL9000のように殺人犯になりかねない人間的意識ではなく、Amazonのリコメンドのような形になるだろう。

 すでにコグニファイされたAIが身の回りに登場し始めている。

それはAmazonプライムミュージックなどの音楽配信サービスである。

あなたの好みを収集。他の人の視聴傾向などを擦り合わせて、あなたが好むであろう音楽を探し出し、聞かせる。

これはあらゆる既存の仕事に置き換えることができる。

例えば、裁判官は最も知識が必要そうな職業に見える。
法律を知り、過去の判決例を考慮して判決を下す。
状況を考慮して、情状酌量を与える。

まさにデータの蓄積が物を言う。最も簡単にAIに置き換えることができるだろう。

そのAIの進歩によって、職業がなくなっていくことを問題視する人もいるかもしれない。しかし、それはこれまでの歴史上よく見られてきたことである。

農家が耕作機械を導入したことで、多くの人でが必要なくなり仕事がなくなった。

じゃあ、人々はどうしたか。

新たな仕事を見つけ出したのだ。

これはマシンとの競争ではない。もし競争したら我々は負けてしまう。これはマシンと共同して行う競争なのだ。あなたの将来の給料は、ロボットといかに協調して働けるかにかかっている。

第3章 Flowing

Flowing (流れていく)

インターネットは世界最大のコピーマシンである。このインターネットに流れたものは全てコピーされ世界中に流されている。

固定化される所有という概念が形を変えていっているのだ。

これまで車で移動するという機能は車を所有すると手に入る固定化された概念だった。それがUberやgrabなどのサービスにより、個人的オンデマンド運輸サービスに姿を変えている。車を所有する必要がないのだ。

音楽も、昔はラジオのDJが選んだ曲を聞くしか方法がなかった時代からストリーミングで好きな曲を自由にリアルタイムに聞くことができるようになった。

本も実際に購入し、手元に持ち、読むものであったのが、オンラインの本棚に並んでいるのを端末までコピーして読むことができるという仮想の本棚がスマホの中に登場したのである。

またそれにより元々流れている時間の流れにも変化が訪れた。
電話の請求書は月ごと。仕事はプロジェクトが完了するまでが1クールだった。手紙は手元に届いて帰って来るまでにそれなりに時間がかかっていた。

メールは即時に返して欲しいと願うようになり、医療検査も今すぐ知りたい。支払いはオンラインでリアルタイムに払ってくれと願うようになる。

さらに音楽や映画などコピーされたものに関しては無料で楽しめるようになっている。

この「無料化」と「流される化」によって、全ては価値のない(無料)なものになってしまうのだろうか。

そこで価値が見出されるものがある。

即時性

映画はレンタルやダウンロードで最終的には無料に限りなく近くなる。しかしなぜ人々は映画館に映画を観にいくのか。それは映画を買っているのではなく、即時性をかっているのだ。

パーソナライズ

コンサートを録音した一般的な音楽盤は無料になるだろうが、あなたの部屋の音響環境にぴったりに調整をされるものに対してはお金を支払うだろう。

またアスピリンのように安価な薬でも、あなたの身体。健康に合わせて調整されたものであればある程度高額であっても価値があるものになるだろう。

信頼性

無料で手に入るソフトウェアやアプリがあっても、バグがないことやスパムでないことの保証のためにお金を払う人がいる。それは信頼性に価値を見出しているから。

アクセス可能性

自分の持ち物の面倒を外注したいという考えからクラウドサービスにお金を払ってデジタル倉庫(クラウドサービス)にお金を払う。自分の持ち物に簡単にアクセスできる環境を揃えることには価値がある。

実体化

音楽は無料で、身体的パフォーマンスが高価である。ライブコンサート、生のTEDトーク。身体性を孵化することで力や価値が加わる。

支援者

最近では、音楽家が直接ファンへ支援を依頼することも増えてきた。有名なバンドレイディオヘッドが2007年に行ったアルバムに対し、出資を募ったところこれまでの総売上を越えるほどの収入を得ることができた。

喜びを得るためにオーディエンスがお金を払う事例は他にも多くある。

発見可能性

あまりに選択肢が増えすぎた今、あらゆるものが人の注意を奪い合っている。
その整理をするのが、批評家や論評、口コミである。最近では友人からのおすすめ(レコメンド)などのガイドにお金を払うようになっている。

Amazonは商品が手元に届けられることに価値があるのではない。多くの人がレビューをしてくれていて、それが参考にできるからAmazonに価値があるのだ。

 

この流動性は止まることはなく、突き進んでいく。

第4章 Screening

Screening(画面で見ていく)

本を読まなくなり、スクリーンを眺めるようになって果たして読み書きは減ったのか。
実は人間の読み書き量は飛躍的に増えている。

人々が文字を読む時間は80年代に比べてほぼ3倍になっている。

2015年までにはウェブには60兆ページの情報がアップされ、毎日数十億ずつページが増えている。ブログで言えば毎日8000万ページ増えているのだ。

これからの読書というのは形が変わったものとして、進化していく。

本と本の間に境目がなくなっていくのだ。

真面目なノンフィクション本の場合、参考文献や脚注がつけられている。そこにリンクが貼られているので紹介された本が実際に読むことができる。それを辿っていくことで核心へとたどり着くことができる。まるで本のwikipedia化だ。

全ての本がリンクされ、現実にも影響を与える。

ガイドブックに記載されているレストランをタッチするだけで、地球の反対側のレストランを瞬時に予約することができる。全ての情報は画面でリンクされるのだ。

そして、スクリーンはユーザーを見ている。最新式の画面では人の視線がどこに集まっているかを測定できる。それにより、ユーザーが何に興味・疑問を持っているのかを判断し、それに関する情報を即座に提供することができるようになる。

今ふと思い浮かんだが、日本語の場合、読む速度にあわせて漢字の量を調整するなんていう機能も可能である。

第5章 Accesing

Accesing(接続していく)

世界最大のタクシー会社ウーバーは車を1台も持っていない。フェイスブックは世界で最も人のあるメディアの所有者だが、コンテンツは1つも作っていない。アリババは最も市場価格の高い小売業だが、倉庫は持っていない。エアビーアンドビーは世界最大の宿泊施設提供会社だが、不動産は何も持っていない。

Amazonのジェフ・ベゾスがキンドルを発表した時、それはプロダクトではなく、読むものへのアクセスを得るサービスであると発表した。

また最近生まれたBitcoinも接続の象徴であるといえる。政府が保証するのではなくネットワークの相互監視の元でBitcoinの価値を保証するのだ。

Bitcoinそのものが成功例として挙げられるかは未来にならないとわからないが、このような形の貨幣文化が育っていくことは間違いないだろう。 

 

第6章 Sharing

Sharing(共有していく)

ビルゲイツはかつて、フリーソフトウェアを擁護する人々を、資本家が口にできる限りの罵詈雑言で罵った。『共産主義者のようなアカ野郎』で『邪悪な力』であると。

今の人々は決して共産主義者では無い。「シェアリングエコノミー」に生きる人々なのだ。その新しい特徴を紹介する。

1.シェア

人々はシェアに積極的だ。フェイスブック、ツイッター、フリッカー、インスタグラム、ブログ。ユーザーは無料で自分の経験や知識、気分をコンテンツとしてシェアする。

2.協力

コミュニティーの枠を越えて、協力していくことで大きな影響を社会に与える。アラブの春では、一人の人間がコメントしたことで、拡散し社会への影響を与えた。

3.コラボレーション

オープンソースなソフトウェア開発ではコラボレーションをすることで高品質なプロダクトが生まれている。

4.集産主義

ブラックダックオープンハブがオープンソース産業の調査を行なった際に出た結果では、約65万人が50万以上のプロジェクトで働いている。
これはGMの従業員の3倍の規模である。GMの全従業員が無給で自動車を生産し続けているということは想像できるだろうか。

 

シェアしていくことはこれからの世界で大きな力を持ち続ける。

第7章 Filtering

Filtering (選別していく)

現在12ヶ月ごとに800万の楽曲、200万冊の本、1万6千本の映画、300億のブログ投稿、1820億のツイート、40万のプロダクトが新たに生み出されている。

そして、この星で録音された曲の数は1億8000万にもなる。普通のMP3で圧縮した場合、人類の録音した音楽データは20テラバイトのハードディスクに収まる。

いま20テラのハードディスクは20万円くらいで購入できるが、5年後には1万円以下になっているだろう。

それだけのデータが手元にあったとして、あなたはどうやって聞く曲を選ぶのだろうか。人生は有限である。

現在下記のようなフィルターが機能している。

ゲートキーパー:親、教師、権威

仲介者:出版社や音楽レーベル、映画スタジオがボツにしている

キュレーター:美術館や小売店のキュレーターが何を入れるか決める

ブランド:同じ機能を持つものから信頼性を与えるブランドがフィルターの役を

政府:ヘイトスピーチや宗教弾圧などが排除される。

友人:友人からの口コミ・おすすめ

我々:好みや判断で選ぶ

 

ここで恐ろしいのは「過剰適合」といわれるものである。

 「多くの人がこれを選んでいます」というフィルターにのみ頼って本を買う人は、他の考えに基づいた本を読むことはない。

第2章であげたリコメンドシステムはあなたの好きなものをあげてくれるかもしれないが、あなたが今嫌いで好きになるかもしれないものは挙げてくれない。

 

我々はフィルタリングについてはまだまだ初期段階にいる。

第8章 Remixing

Rimixing (リミックスしていく)

文化的なメディアや強力なメディアはリミックスから生まれる。

ハリウッドが年間1200時間の映像作品を作る傍で、それ以外の映像が年間何億時間分も作成されている。

最も再生されている動画は、毎月120億回以上見られている。

第4章で本の未来をあげたが、映像もそうなっていくだろう。自転車と犬と言っただけで、全ての映画の中に出てくる自転車の犬のシーンが返ってくる。

曲も違う曲をかけあわせてリミックスするマッシュアップというジャンルがすでに成立している。

第9章 Interacting

Interacting (相互作用していく)

VR世界(ヴァーチャルリアリティー)はもう目の前だ。

ヴァーチャルリアリティーでは、視力や体感を通して架空の空間に没入することができる。自分の行動や人の行動が、機器を通じて相互作用を与える。

今もうその時代はきていて、それが進歩するだけである。

ある友人の子どもはよりより歩きで言葉も喋れない頃から、父親のiPodを横取りして使い出した。(中略)父親が高解像度の画像を写真用の紙に印刷して、コーヒーテーブルの上に置いた。するとよちよち歩きの娘がそれに近づいて、指を置くと拡げてその写真を大きくしようとしているのに気づいた。(中略)「パパ、壊れているよ」と言った。そう、インタラクティブでないものは壊れているのだ。

 バーチャルな空間が広がるとどういうことが起こるのか。今対面しているのが人間なのかAIなのか、本当に会いたいと思っている人なのかということがわからなくなる可能性がある。

しかし、この世界ではあなたの身体がパスワードになるのだ。VRはあなたの体を解析し、他の世界に写し出す。計測できる項目のほとんどが指紋のように個人に固有なものである。心臓の鼓動も歩き方もキーボードを叩くリズムも人によって違う。

インタラクションが個人を特定するのだ。

第10章 Tracking

Tracking (追跡していく)

医療とは統計である。ある薬の効力を確かめるために500人に投薬し、効果を確かめる。より多くの人間に効果が見られるもののみが薬として認可される。仮に500人に投与して1人が完治したとしても、それは有効だと認められない。

しかし、一人一人の人間を追跡していくことで、Nの数字は1になる。

他の誰に効かなくても、あなたにだけ効けばそれはいい薬なのだ。

その自己追跡はインターネットの拡大のおかげで、身近なものになっている。

そして、それは医療面に利用されるだけではない。

あなたの人生において会った人、会話した内容、書いた文章、食べた食事などの全てがデータ化される。

そのデータとAIのCognifyingが組み合わさった時にどんな革新的なサービスが生まれるか。

第11章 Questioning

Questioning (質問していく)

人間はインターネットに毎年2兆回の質問をし、検索エンジンは2兆回の回答を返している。

AIは、それら全人類の質問をまとめ上げることで、いまの人間がわかっていない未知の領域を割り出すだろう。どこに無知があるのか。無知の無知を特定していく。

じゃあ、いつかは謎は全て解け、質問をすることがなくなるかというと決してそんなことはない。逆に回答はさらなる質問を複数生み出す。

質問を生み出すものは、我々人類を絶え間なく探検する新しい領域、新しい産業、新しいブランドや新しい可能性、新しい大陸を生み出す原動力なのだときちんと理解されるようになるだろう。質問していくことは単純に言って、答えることよりも力強いのだ。

第12章 Beginning

Beginning (始まっていく)

これから何千年もしたら、歴史家は過去を振り返って、我々のいる3000年紀の始まる時期を見て、驚くべき時代だったと思うだろう。この惑星の住民が互いにリンクし、初めて一つのとても大きなものになった時代なのだ。

(中略)

このとても大きなものは、それまでの種に対して新しい考え方(完璧な検索、完全な記憶、惑星規模の知的能力)と新しい精神をもたらす。それは<始まっていく>のだ。

(中略)

もちろん、この<始まっていく>ことはまだ始まったばかりだ。

さいごに

391ページに渡る大作。結構早く読めるタイプなんですが、こういう考察とかって読むのに時間がかかるし、まとめるのも大変でした。

これを読んで、このブログのあり方についてもとても勉強になりました。

ぜひ読んで見てください。ウェブの片隅だけど、誰かの参考になれば嬉しいなぁ。