テレビ撮影の現地コーディネーターというお仕事 あなたの知らない仕事の世界

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しばらくブログの更新をお休みしていました。

その間、何をしていたのかと言うとテレビ撮影の現地コーディネーターとして撮影に同行していました。

情報の開示には厳しい世界なので、ビクビクしながら書いています。それでも一般論的なお話はできるかなと思うので怒られない程度に仕事について紹介したいと思います。

海外在住でこれからこの業界に携わるかもしれない人に役立てば幸いです。

テレビ撮影の現地コーディネーターの仕事

現地コーディネーターの仕事は多岐に渡ります。

  1. 撮影したいもののリサーチ
  2. 撮影したいもののセッティング
  3. 撮影許可の取得
  4. 渡航全体の手配
  5. 現場対応

簡単に分けるとこの5つがメインの仕事です。

1.撮影したいもののリサーチ

まずは日本の制作会社さんから◯を撮りたいと言われます。
それについてリサーチ(下調べ)をします。

自然現象だったら、いつどのタイミングで最もキレイに撮影できるのかなどの情報ですね。イメージしやすいのはオーロラとかです。もしくはお祭りならその日程や準備期間、お祭りの詳細などを調べます。

その情報を元に制作会社さんがどういう撮影をしたいかを考えられます。

そのイメージを出来る限り実現化させるのがコーディネーターの仕事です。

2.撮影したいもののセッティング

下調べが終わったら、撮影に備えて色々準備しなくてはいけません。
著名人のインタビューなら予めアポイントを取っておかなくてはいけません。
そして、意外と大変なのが撮影許可などです。

3.撮影許可の取得

撮影許可には様々な種類があります。

国からの許可はもちろんのこと、市町村の許可や観光地や建造物の所有者の許可、スポーツ協会からの許可など撮影するものの数だけ許可が必要になります。

これを舐めていると、現場で撮影が許されず主眼となるものが撮れないという大変なことが起こってしまいます。

それは100%現地コーディネーターの責任です。

問題の内容によると思いますが、そんなことが起ころうものなら二度と現地コーディネーターの仕事はできなくなります。(この仕事は口コミが最も重要なんです)

そして現地で新しく『これ撮りたいなぁ』と言われること、多いです…!
その要望にどう対応するかが腕の見せ所。

ありとあらゆる許可を取得し、さらに現地でどんな要望を言われても対応できるように想像できる限りの想定をする必要があります。

4.渡航全体の手配

現地コーディネーターの仕事で最も楽で簡単なのが渡航手配です。
旅行業界的にいえば『アゴ・足・枕』と呼ばれるものの手配です。

アゴは食事。は移動手段。は宿泊施設です。

最近は『撮影団!』って感じで大人数になる機会は減ったと思います。テレビ業界も経費削減で大変みたいですね。

渡航が直前に決まることが多いので、あまり大人数だとホテルの手配が大変です。

5.現場対応

これが最も重要かつ大変なお仕事です。

日本からの撮影班とともに撮影に同行します。

東で現地でこれを撮りたいと言われれば、行ってお願いをし
西でインタビューをしたいと言われれば、道行く人に声をかけ
スタッフに怒られ、褒められもせず、苦にもされず、
そうものに私はなる。

だいぶ言い過ぎですけどね。しかし、無茶振りが多いのは事実です。
ADさんがいるとそこまででもないのですが、結局現地語が使えるのはコーディネーターサイドなので、あらゆる交渉ごとを指示されます。

海外撮影だと『無茶言ってなんぼ』感があります。ダメ元だけど、言ってみたらどうにかなるんじゃない?という期待をヒシヒシと感じます。

可能な限りお手伝いしたいので頑張ります。が、無理なこともあります。

そこの線引きをしっかりと共有できるような関係性作りが重要なんだと思います。

撮影の違い

当たり前ですが、番組の種類によってコーディネーターの仕事は大きく変わります。

・情報系番組

あの国の◯◯に迫る!とかニュース番組とか。
基本的にお題が決まっているので、無茶振りはありません。

撮りたいもの、撮りたいインタビューなんかが決まっていますので、それに沿った取材になります。

現地の負担は少なめです。
その分、取材も簡単…というと語弊があるのですが、現地の紹介とかではないので個人的には残念に思う点もあります。

・バラエティ番組

面白い観光地やお祭りの紹介など。
もしくは国全体を面白おかしく取材します。

ベースとなる企画案はあるのですが、あとは現地でどれだけ予想を覆す面白いものがあるのかを追い求めます。

現地の負担が多めです。人によってスタイルが違うので一概には言えませんが、基本的には夜討ち朝駆け。一日中ネタ集めに走ります。
大変な一方、テレビでの注目度は全く違います。
その国を紹介したい・もっと日本の人に来てもらいたい。という気持ちがあれば頑張りがいがあります。

業界について

撮影の現地コーディネーターという業界は非常にニッチです。
国の発展具合にもよりますが、それぞれの国に数社あるくらいなんじゃないですかね。

業界は非常に狭く大体独占市場です。そして新規参入が難しいです。

昔からお付き合いのあるところが口コミで広がり実績もどんどん積んでいきます。

じゃあ、新規参入するにはどうすればいいのか。

2つの道があると思います。

1.すでに強いところに入り、コネクションを作って独立。
→敵を作ります。もしそれが嫌ならコネクションを作った上で他国に移住するというのも手かもしれません。

2.地道に営業活動
→運次第です。というか、どこに営業したらいいか難しいですよね。
一社でも制作会社を知っていれば、そこを足がかりに広げて行くという感じになると思います。あとはウェブサイトとかで広げていき、◯◯という国なら◯◯さんだ!というブランディングして行く感じでしょうか。

やはり実績が大事なので、最初の1件目が大事になると思います。

 

現地コーディネーターへの問題提起

個人的に思うことがあるので、問題提起を。

情報社会になって、ある程度の情報はインターネットで調べることができるようになりました。その結果、現地コーディネーターも旅行業の人間も現場主義ではなくなってきました。ちょっとインターネットで調べて、回答するだけ。

大手旅行会社から派遣されてきて、3年間住んでいる町から出ない人もいます。

どの口で、旅行のプロ・現地のプロだと名乗れるのでしょうか。
その国のプロであると名乗るのが恥ずかしくないんでしょうか。

旅行業やコーディネーター業は、インターネットの進化ですぐになくなる仕事です。
そこで生き抜くために、AIに取って代わられないために、専門性だったり誰にもできないサービスを模索していくしか道はないと思います。

おかげで私みたいな弱小が生きて行くことが出来るので、ある意味感謝していますが。

海外起業のススメ

最初から現地コーディネーターとして起業する人はよほどコネがない限りいないと思います。大抵は旅行会社を営みながら、コーディネーター業も受注するという形になります。

珍しい国に移住するのであれば、旅行会社+現地コーディネーターという起業の仕方は比較的難易度が低いのではないかなと思います。

すこしでも参考になれば幸いです。